フィンランドの魅力

ムーミン

作者 ヤンソン
ムーミンの世界は、奇妙でちょっと危険、それでいて愉快で、私たちにとって何処か懐かしさを覚える場所です。

ムーミン谷の物語は、当初、子ども向けに書かれたため主人公のムーミントロールも幼く描かれています。
第1話は、行方不明になったムーミンパパを探しにムーミントロールがムーミンママと一緒に冒険の旅にでるというもの。といっても、ほんの2、3日、家の周辺を歩き回る程度なのですが、その辺りが後に「ムーミン谷」と呼ばれるようになります。
ムーミン谷の様子は、意外にも、人間の世界の何処にでもあるような田舎にそっくりです。と同時に、そこはスリルに満ち変化に富んだ御伽噺の世界でもあるのです。

ムーミン一家とその仲間たちについても同様で、彼らの考え方、話し方、人との接し方は驚く程人間に似ていることがあります。
実際、ムーミン谷の住民は、姿形以外は、いい意味できわめて人間的です。私達のように単調な日常に縛りつけられない分、人間の素晴らしい面だけを体現化しているのです。

ムーミン谷の住民は、皆、個性的です。すばらしく優しく賢いムーミンママ。
情にもろくて、ちょっと向こう見ずなムーミンパパ。
誠実だけど少し弱気のムーミントロール。クールで孤独を愛する冒険者のスナフキンは皆の憧れの的。
チャーミングなスノークのお嬢さん。
感情に流されない、現実家のおしゃまさん。
意地っ張りで癇癪持ちのミイ。
臆病でけちんぼのスニフ。
とっても内気なフィリフヨンカ。一本調子で鈍感なヘムレン。
その他大勢。いうまでもなく、トーべ・ヤンソンはムーミン谷全員の友だちです。
彼女は周りの人や親戚の中にムーミン達の性格を見出して、それぞれの愛すべき癖や欠点をよく理解していました。ヤンソンには、仲間になること、そして仲間はずれになることがどういうものなか、よく解っていたのです。彼女は、人はそれぞれ違った習慣、外見、権利をもっていることを自分の体験を通して理解していました。大切なのは、思いやりと寛容ということを熟知していました。

ヤンソンは、このことをムーミン達の話を通して間接的に伝えようとしたのです。仲間に対して思いやりを忘れないこと。自分と違う人に対して理解を示すこと。言い換えれば、同情と共感の念を忘れないということです。ただ、そのような立派な言葉はムーミン達の口からは出てきません。
その代わり、ムーミン一家の静かな日常生活やスリルたっぷりの冒険の中で、表現されているのです。

 

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